
「この傘は日傘ですか?それとも晴雨兼用傘ですか?」
「どっちを使えばいいの?」
最近、お客様からこのようなお問い合わせをいただくことが増えています。日傘や傘の種類については、専門用語と世間で使われている言葉の間に少しズレがあるため、混乱してしまうのも無理はありません。今回は、私のこれまでの経験も踏まえながら、日傘と晴雨兼用傘の違いについて、分かりやすく解説していきます。
まず、結論からお伝えしましょう。日差しを遮る目的で傘を使う場合、大分類として「日傘」と考えてもらって構いません。そして、今販売されている日傘のほとんどに、晴雨兼用機能が搭載されているのがスタンダードだと考えて大丈夫です。
その上で、なぜこのような疑問が生まれるのか、その歴史を紐解いていきましょう。あくまで個人的な見解も含まれていることをご了承くださいね。
日傘と晴雨兼用傘、それぞれの歴史を紐解く
大昔の「日傘」は晴れの日専用だった
今から25〜30年ほど前でしょうか。大昔の「日傘」といえば、綿や麻といった天然素材を中心に、美しい刺繍やレースが施されたものが主流でした。これらの傘は、雨の日には使うことができず、まさに晴れの日専用の「お洒落アイテム」だったんです。水に濡れるとシミになったり、生地が傷んだりするため、雨が降ったらすぐにたたむ必要がありました。
晴雨兼用傘の誕生と進化
そんな中、消費者のニーズに応える形で、傘の技術は進化を遂げます。1990年代後半から2000年代初頭にかけて、生地に**撥水加工とUV加工を施した「晴雨兼用傘」**が誕生し、普及し始めました。これにより、「急な雨にも対応できる日傘」や「晴れの日にも使える雨傘」という多機能性が求められるようになります。
しかし、誕生当初の晴雨兼用傘は、あくまで「軽い雨の水は弾く」程度。強い雨が降ると、残念ながら刺繍やレースの加工部分から雨が漏れてしまうといった仕様でした。
その後、地球温暖化による気温上昇やゲリラ豪雨の増加など、気象状況の変化に伴い、「雨傘並みに水を防ぐ必要性」が向上しました。これに対応するため、水漏れの原因となる刺繍やレースの加工が減っていき、より防水性の高い晴雨兼用傘が主流となっていきます。
この時期とほぼ同時に、「遮光」という新しいカテゴリーの日傘が誕生しました。紫外線による健康被害(皮膚がんのリスク、シミ・シワなど)への意識が日本国内で高まり始めた頃、従来のUVカット傘とは一線を画す、より強力な紫外線遮蔽能力を持つ傘として開発されたのです。概ね2000年代中盤以降、ここ15年〜20年くらい前から、「UVカット率99%以上」や「完全遮光(遮光率100%)」といった、高い遮蔽性能を持つ「遮光傘」が確立し、消費者に認知され始めました。そして近年は、遮光だけでなく「遮熱」へとさらに進化を遂げています。
ECサイトの台頭と検索ワードの変遷
この日傘のカテゴリーをさらに複雑にした要因の一つに、ECサイトの台頭が挙げられます。
当時のECサイトでは、「日傘」と「晴雨兼用傘」が明確にカテゴリー分けされていました。しかし、「晴雨兼用傘」というワードがあまり消費者に認知されておらず、猛暑や酷暑の影響で日差しを遮る目的で製品を探される際に、自然と「日傘」というワードが検索の中心になったと考えられます。その結果、検索されるワードで商品登録する業者が増えたという流れもあります。
今どき日傘の賢い見分け方
では、現代の日傘はどのように分類して考えれば良いのでしょうか?
私としては、以下のように捉えるのが最も分かりやすいと考えています。
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大分類としては「日傘」
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中分類としては「晴雨兼用傘」と「晴れの日専用傘」
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さらに「晴雨兼用傘」の中に「遮光傘」「遮熱傘」「UVカット傘」がある
現在、市場で販売されている日傘のほとんどは晴雨兼用なので、急な雨にも対応できると安心して大丈夫です。もし、その傘が晴雨兼用でない場合は、「雨の日には使えません」という表示があるはずなので、購入の際には表示をよく確認してくださいね。
晴れの日専用傘のメリットも
一方で、「晴れの日専用傘」にも独自のメリットがあります。低密度で織られた綿や麻などの生地は熱を溜め込みにくく、防水加工がされていないことで、通気性が高いという特徴があります。傘内部に熱がこもるのが苦手という方には、あえて「晴れの日専用傘」という選択肢もおすすめです。
まとめ:日傘の進化を知って、最適な一本を!
日傘の歴史を知ることで、「日傘」や「晴雨兼用傘」という言葉の背景にある意味合いが、少しクリアになったのではないでしょうか。
現代の日傘は、高いUVカット効果はもちろん、遮光性や遮熱性、そして利便性を兼ね備えた高機能なものが増えています。ご自身のライフスタイルや、日傘に求める機能に合わせて、最適な一本を選んで、今年の夏も快適に過ごしましょう!