「遮熱率」表示、本当に涼しさを示してる? ~生地の試験と“傘製品”の試験、2つの違いを徹底解説~

年々厳しくなる夏の暑さ。日傘を選ぶ際、「涼しさ」を重視する方が増えています。店頭やオンラインショップでは「遮熱率〇〇%」「高い遮熱効果」といった言葉をよく目にしますが、実はこの「遮熱性」を示す試験方法には種類があり、それぞれ意味合いが異なることをご存知でしょうか?

 

「数値が高いから涼しいはず」と思って購入したのに、期待したほどではなかった…という経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。それはもしかしたら、試験方法の違いによる数値の解釈の誤認があったのかもしれません。

 

このページでは、日傘の「涼しさ」に関わる2つの主な遮熱性評価方法の違いを分かりやすく解説し、皆様がより納得して、本当に快適な日傘を選べるようになるための情報をお届けします。

なぜ日傘に「遮熱性」が求められるのか?

近年、夏の猛暑は深刻な問題となっており、熱中症対策の重要性が叫ばれています。日傘は、紫外線から肌を守るだけでなく、直射日光を遮り、体感温度を下げることで、熱中症リスクを軽減するアイテムとしても非常に有効です。この「涼しさ」の鍵を握るのが「遮熱性」です。遮熱性の高い日傘は、太陽からの熱エネルギーを効果的にブロックし、傘の下に快適な空間を作り出してくれます。

遮熱性能を示す、主な2つの試験方法

日傘の遮熱性能は、主に以下の2つの異なるアプローチで評価されます。

1. 「生地」そのものの遮熱性試験(例:JIS L 1951準拠の方法)

  • 試験の概要:
    これは、日傘に使用される「生地」そのものが、どれだけ熱を通しにくいかを評価する試験です。一般的には、生地サンプルに人工太陽照明灯などの光源から熱を照射し、生地の裏側の温度がどれだけ上昇するかを測定します。そして、生地がない状態(ブランク)と比較して、熱をどれだけ遮断できたかを「遮熱率(%)」として算出します。
    アンベル社の場合、JIS L 1951「繊維製品の遮熱性評価方法」に準拠した方法で生地の遮熱性を評価することがあります。(計算式例:遮熱率 (%) = (ブランク測定での温度上昇 – 生地測定での温度上昇) / ブランク測定での温度上昇 × 100)
  • この試験で分かること:
    生地の素材、織り方、密度、色、そして特に裏面に施されるコーティング(例:PUコーティング)などが持つ、基本的な遮熱ポテンシャルを知ることができます。
  • 表示例:
    「遮熱率〇〇%(生地試験による)」「JIS L 1951準拠 遮熱指数〇〇」など。
  • 知っておくべき点:
    この試験はあくまで生地単体での性能評価です。そのため、傘として製品化された際の形状(ドーム型であること)、通気性、骨組みなどの部材からの熱の影響、傘の内側と外側の色の組み合わせによる効果などは考慮されません。したがって、この数値がそのまま「傘をさした時の涼しさ」と直結するわけではない点に注意が必要です。

2. 「傘製品」としての遮熱効果試験(例:QTEC法などの試験)

  • 試験の概要:
    こちらは、実際に完成した「傘製品」の形で、どれだけ日射熱を遮り、傘の下の温度上昇を抑えられるかを評価する試験です。例えば、マネキンの頭頂部などに温度センサーを設置し、傘を開いた状態で人工太陽照明灯を照射します。そして、傘をさしている場合とさしていない場合とで、センサー部分の温度上昇にどれだけの差が出るかを測定し、「遮熱効果率(%)」などを算出します。
    この方法は、第三者検査機関であるQTEC(日本繊維製品品質技術センター)の評価方法などを参考にします。
    (計算式例:遮熱効果率 (%) = (ブランク測定での温度上昇 – 傘製品測定での温度上昇) / ブランク測定での温度上昇 × 100)
  • この試験で分かること:
    傘の生地だけでなく、その形状、サイズ、色(表裏)、通気性、さらには骨などの部材も含めた、製品全体の総合的な「日陰効果」や「涼しさ」を評価できます。より私たちの実使用状態に近い条件での性能を知ることができるため、実際に傘をさした時の快適さをイメージしやすい指標と言えます。
  • 表示例:
    「遮熱効果率〇〇%(傘製品試験による)」など。

「生地の遮熱率」と「傘の遮熱効果率」はどう違う?~ここが誤認しやすい!~

この2つの試験方法は、測定対象と評価するものが根本的に異なります。
消費者が陥りやすい誤認は、「遮熱率」という言葉の響きから、どちらの試験方法で得られた数値も同じように「傘をさした時の涼しさ」を示していると考えてしまうことです。しかし、上記のように、生地単体の遮熱率が高くても、傘の設計や構造によっては、期待したほどの涼しさが得られない可能性もゼロではありません。

逆に、「傘製品としての遮熱効果率」が高い製品は、実際に使用した際の快適さがより期待できると言えるでしょう。

比較ポイント 生地そのものの遮熱性試験 傘製品としての遮熱効果試験
測定対象 生地単体 傘製品全体
評価する性能 生地の素材・コーティングの基本的な遮熱能力 傘をさした時の総合的な「涼しさ」への効果
実使用感との関連 間接的 より直接的

HEATBLOCK®が「傘製品」の試験を重視する理由

私たちアンベル株式会社が開発したHEATBLOCK®日傘では、生地単体の高い性能(遮光率100%、UVカット率100%、高い遮熱性)を追求することはもちろん、お客様が実際に傘をお使いになった際の「真の快適さ」を何よりも大切にしています。

 

そのため、生地の基礎研究に加え、より実使用感に近い「傘製品としての遮熱効果試験」を重視し、その結果を積極的にお客様にお伝えするよう努めています。例えば、HEATBLOCK® VERYKAL(Sand Whiteカラー)を用いた試験では、太陽光の熱を88.4%カットするという高い「遮熱効果率」が実証されています。

 

これは、HEATBLOCK®が単に高性能な生地を使用しているだけでなく、その生地の能力を最大限に引き出し、かつ傘全体の設計においても「涼しさ」を追求していることの証左であると考えています。

賢い消費者のためのチェックポイント:日傘の「涼しさ」表示を見る際の注意点

日傘の「遮熱性」に関する表示を確認する際には、以下の点に注意すると良いでしょう。

  1. 「生地」の試験結果なのか、「傘製品」の試験結果なのかを確認する。 もし両方の情報が開示されていれば理想的ですが、特に「傘製品」での試験結果は、実使用時の参考になります。
  2. どのような試験方法で得られた数値なのか、可能であれば確認する。 (例:JIS L 1951、QTEC法参考など)これにより、数値の背景にある評価基準がある程度推測できます。
  3. 単一の「遮熱率」という数値だけでなく、総合的な製品情報を考慮する。 生地の素材、コーティングの種類、傘の構造(例:二重張り、ベンチレーション機能の有無)、色、サイズなども、体感的な涼しさに影響を与える要素です。
  4. 信頼できる情報源か確認する。 メーカーがどのような姿勢で情報開示を行っているかも、製品を選ぶ上での一つの判断材料になります。

まとめ:正確な情報で、本当に「涼しい」日傘を選びましょう

日傘の「遮熱性」に関する表示は、一見同じように見えても、その背景には異なる試験方法や評価基準が存在します。この違いを理解することで、宣伝文句に惑わされることなく、ご自身が本当に求める「涼しさ」を提供してくれる日傘を賢く選ぶことができます。

 

私たちHEATBLOCK®は、これからもお客様に正確で分かりやすい情報を提供し、科学的な根拠に基づいた真の快適さを追求してまいります。この情報が、皆様の日傘選びの一助となれば幸いです。


関連情報